強度計算・実践への一歩
[非対称曲げでの断面係数] 2011-01-10 Mori Design Office  ■ 対称曲げ / 非対称曲げ、及び 記号・記述 曲げ応力が零である中立軸が存在し、はり理論の曲げの式が適応できるとする。
曲げ応力σの値は中立軸軸Nからの距離に比例し、最遠位置に最大が発生するとする。
・基準軸を X,Yとする   : 横断面の図心を通り、図形位置の基準としての軸とする
・断面2次モーメント   : Ix , Iy , 断面相乗モーメント Ixy
・慣性主軸を U,Vとする  : 横断面の図心を通り、断面相乗モーメント Iuv=0 となる軸であり、 基準軸 XYに対し角度αとする
・断面主2次モーメント  : 断面係数の式 に於いて、式HI及び式LM、及び断面主相乗モーメントは式J
              Iu=Ixcos2α+Iysin2α−Ixysin2α   Iv=Ixsin2α+Iycos2α+Ixysin2α
              Iu=(Ix+Iy)/2+{(Ix−Iy)2+4・Ixy2 }0.5/2   Iv=(Ix+Iy)/2−{(Ix−Iy)2+4・Ixy2 }0.5/2
              なお、Iuv={(Ix-Iy)sin2α}/2+Ixycos2α=0 にて α=tan-1{2・Ixy/(Iy−Ix)}/2

・曲げモーメントM の方向 : 軸Uとの角度φ (基準軸Xとの角度θM なお φ=θM−α) Mu=M・cosφ  Mv=M・sinφ
・中立軸 Nの傾き     : 軸Uとの角度β(基準軸Xとの角度θN なお β=θN−α) UV座標での中立軸の位置 v=u・tanβ
曲げモーメント方向の傾きが中立軸 Nと一致する場合は対称曲げであり、一致しない場合は 非対称曲げと称する。
非対称曲げは、断面主2次モーメントに2つの異なる値があり(Iu≠Iv)、かつ 曲げモーメント方向が 慣性主軸に
一致しない(φ≠0)場合に起こる。(後述の式(5)参照)
不等辺山形鋼では Iu≠Iv であり、慣性主軸 の傾きが半端な角度(アングル短辺に対し20〜30度)である為、一般的に非対称曲げとなる。
 ■ 慣性主軸の傾きの算出
慣性主軸の傾きαは前述、α= tan-1{2・Ixy / ( Iy−Ix )}/2   ----(1) rev 2024-2-25
なお、相乗モーメント Ixy は2次モーメントから求める方法がある。Iu・Ivに前述式のIu,Ivを代入すると0.5乗は消えて
    Iu・Iv= Ix・Iy− Ixy2 にて Ixy= {Ix・Iy−Iu・Iv}0.5  ----(2)

形材の形状規格(JIS G 3192)に、Ix, Iy及び 最大値 Iu, 最小 Ivの値、不等辺山形鋼では更に tan a の値を記載、
但し、相乗モーメントの記載はないので、x軸は 短辺に平行、傾きαは 短辺とのU軸の角度。
の記載があり
 ■ 曲げ応力と中立軸
横断面に UV座標をとり、作用している曲げモーメントMをU,V方向に分解して Mu=M・cosφ, Mv=M・sinφ
任意の位置 P点(u,v)に生じている曲げ応力σを 慣性主軸のU,V方向に分解し、 σu=vMu/Iu  σv=−uMv/Iv
従って、曲げ応力

   σ=σu+σvMu―― 
Iuv

Mv―― 
Ivu
----(3)

    M・cosφIu
v
M・sinφIv
u

(Iu
u・tanφIv
)M・cosφ
----(4)
中立軸の位置では、応力σが零であるので、

    σ=(Iu
u・tanφIv
)M・cosφ= 0 より   
v =
Iu・tanφ―――――
Iv
u

中立軸の直線、v= tanβ・u となる 角度βの値は、

     β=tan-1(Iutanφ―――――
Iv)
----(5)

曲げ応力の算出式 (中立軸を基準として算出)
  σ=MNvN/IN
----(6)

    
  但し、 MN: 曲げモーメントMの中立軸方向の成分 MN= M・cos(φ−β) ----(7)
      IN: 中立軸に関する断面2次モーメント  IN= Iucos2β+ Iusin2β なお、Iuv=0 ----(8)
      vN: 点P(u,v)から中立軸への距離     vN= v・cosβ-u・sinβ ----(9)
cf. uN= u・cosβ-v・sinβ


  式(6)への式誘導
  曲げモーメントM 式(7)を変形し、式(11)への代入整理が出来るようにする。
 ■ 計算例
計算例として、前提条件:右図の片持ち梁
  ・曲げモーメントM の方向:θM
  ・部材形状: 不等辺山形鋼 L150x100x9 
とする。
部材特性は便覧などで下記値を得る。( )の値は当方の算出値。
 標準寸法(mm)断面積(cm2) 重心位置(cm) 断面2次モーメント(cm4)  断面係数(cm3) 慣性主軸
 A X Btr1r2 a Cx Cy  Ix Iy 最大Iu 最小Iv Zx Zy tanα
 150 X 1009126 21.84
(21.845)
 4.76
(4.7650)
 2.30
(2.3004)
 502
(502.05)
 181
(180.70)
 579
(578.83)
 104
(103.92)
 49.1
(49.052)
 23.5
(23.469)
 0.439
(0.43916)

上記表より、慣性主軸の傾き α=tan-1(0.43916)= 23.709 度
従って、慣性主軸座標での曲げモーメントの方向 φ= θM−α= 0−23.709= -23.709度
慣性主軸座標での中立軸の傾き

 β= tan-1(Iutanφ ――――― Iv) =tan-1{578.83・tan(−23.709) ―――――――――――――― 103.92} =tan-1(-2.44608)=-67.764度
 (尚、XY座標での中立軸の傾きθN=β+α= -67.764+23.709= -44.056度)

中立軸に関する断面2次モーメント
 IN= 
Iucos2β+ Ivsin2β

 = 578.83・cos2(-67.764)+103.92・sin2(-67.764)= 171.92 cm3

中立軸からの最遠距離γN=6.1334cm

   尚、最遠点のXY座標値 ( 0.71754, 14.831 )

従って、中立軸に関する 断面係数 ZN
=INN=171.92/6.1334 =
28.031cm3
片持ち梁の固定部での曲げモーメントは、 M = 500cm x 20kgf = 1000 kgf・cm
従って、曲げ応力 最大値は、

  σMAX=MN/ZN= MN/28.031 = M /(28.031/0.71867) = 1000/39.004 = 25.636 kgf/cm2
  但し、MNは、曲げモーメントMの中立軸方向の成分であり、

  MN= M・cos(θM−θN) =M・cos( 0 - (-44.056)) = 0.71867・M



■関連用語とページ: 
 ・断面特性の計算の基礎 (矩形・円形・三角形・山形)→断面特性の式
 ・座標移動/回転、断面2次モーメント・断面係数→断面係数の式
 ・計算ソフトの実例画面(慣性主軸、中立軸、断面2次モーメント、断面係数)→断面計算画面(山形)